Story KURARAY-2
人は事実の羅列だけでは興味を引かない。
読み手にそんな義務はないからだ。
人を引き込むストーリーを探る。

「臨時ニュースです!火星人が…」

 

アナウンサー:「臨時ニュースです!火星人が…、本日我々火星人が、歴史的な日を迎えようとしています。この火星に、なんと、宇宙からナゾの飛行物体が近づいてきています。一体、その正体は何なのでしょうか?火星テレビの中継車が現地に飛んでいます。さっそく現場から中継でお知らせします。タコハチさーん、今のそちらの状況はいかがですか?」

レポーター:「はい、こちら現場のタコハチです。パラシュートを開いた未知の物体が、今まさに、この火星に近づいてきています…。」アナウンサー:「…ということは、間違いなく火星外生物の乗り物でしょうか?」レポーター:「今のところは何とも…うわっ!!! たった今、そのナゾの飛行物体が、突然…あー、口にするのもおぞましい…タコ焼きのような複数の球体に包まれました…そして、あと数秒でこの火星に衝突するものとみられ…」ドスン!ドスン!ドスン!…という衝撃音。アナウンサー:「タコハチさーん!だいじょうぶですか?タコハチさーん!顔色がちょっと赤いようですが…」レポーター:「…信じられない光景を、今、目の当たりにしています…。火星上に衝突したその物体は、タコ焼きのような球体にしっかり守られるように、大きく、何回も、地面をバウンドして、転がっています…しかし強烈な衝撃を受けたにもかかわらず、まったく損傷が見られません!なんという衝撃吸収力でしょうか…。信じられません!! 恐るべきタコ焼きパワーです…」(一方、地球では…)「臨時ニュースです!火星人が来襲しました…」というラジオドラマが昔放送されて地球の人々がパニックに陥ったというエピソードがありますが、もし火星に高等な生物がいるとしたら、逆の立場としてこのように驚いていたことだと思います。2004年(日本時間1月4日午後1時35分)NASAの無人火星探査機が火星の赤道南側にあるグセフ•クレーターの着陸に成功しました。火星人が見た(かもしれない?)、その球体は、1997年の火星探査計画から採用されてきたクラレの「ベクトラン」という特殊な糸で作られたエアーバッグでした。「ベクトラン」とは通常の衣料用ポリエステルの約6倍の強度を有し、マイナス100℃程度の環境においても性能が損なわれないスーパー繊維です。また飛行の負担を減らすために理想的な軽さという特性と、岩石などの鋭いものにぶつかっても切れにくいという長所を持っています。実際には、火星人がレポートしているように(していないか…)、着陸の8秒前に、球体にふくらんだ24個のベクトラン製エアーバッグが火星探査機の周囲をしっかり包み込み、着陸の衝撃を軽減しました。そして、エアーバッグの内部に格納されていたゴルフカート大の探査機は当初3ヶ月程度でその役割を終えると考えられていましたが、今年2006年になっても火星上の画像を地球に送りつづけています。それは「ベクトラン」による着陸時の衝撃吸収が予想を超える働きをした証とも言えるかもしれません。レポーター:「おや?タコ焼きが収納されて、中から、何か出てきました…。車輪のついた足が…合計6本ついています。そして…なんと…動き始めました…」アナウンサー:「6本?我々火星人のような8本足ではないということは…間違いありません!火星外生物です!!地球から来たという情報も入っていますので、絶対に見つからないように、タコハチさん、注意してください!地球に連れて行かれてタコ焼きにでもされた日には…」

 

時代と、関係しています。

 

 

Creative Director + Copy Writer:松木圭三
Creative Director + Art Director:副田高行

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